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【後編】チームへの信頼が「個」の自立を促し、個が自由に羽ばたく

後藤太一さん(リージョンワークス合同会社 代表社員)
飯石藍さん(リージョンワークス合同会社 ディレクター)

全国の都市再開発から地方創生に至るまで、規模の大小にかかわらず全力でまちづくりに取り組み戦略立案を行ってきたリージョンワークスは、2021年、大胆な組織改革に取り組んだ。「天才肌」の代表・後藤太一さんが抱えた苦悩は、実は多くの組織や経営者が共通に抱える問題でもある。秋から春にかけてplan-Aは後藤さんに徹底的に寄り添った。その手法は、カウンセリングでもありコーチング、ワークショップ設計からチームビルディング、事業開発支援に至るまで、plan-Aが持つ力を総動員し、リージョンワークス自身がチームメンバー自らの言葉で「こうありたい」「こう働きたい」を宣言し、自ら実行するまでを導いた。
2022年春、「雇用」から「業務委託」へと働き方を変えていったリージョンワークスのメンバーは、新年度から「究極のプロ集団」としてイキイキと個を発揮し始めた。プロジェクトを進めるうえで迷いなく、「脱・個人」「脱・後藤」を果たし、個々のメンバーの持つ才能が開花している。その様子を最も喜んでいるのは、代表者であり創業者の後藤さん本人でもある。そして、後藤さん自身もまた、新たな航海に向けての活力を取り戻しているのだ。
plan-Aがリージョンワークスに伴走したこの半年間は、互いが互いを「鏡」として意識し、時代の普遍性を感じ取っていった時間でもあった。社会のために、未来のために、組織はどうあるべきなのか、個々の暮らし方、働き方はいかに自由であるべきか。その根底に流れるキーワードを紐解きながら、リージョンワークスの組織改革のこれからを展望する。

心理的安全性の担保と信頼

── そうして迎えた新年度、2022年4月1日の後藤さんの心持ちはどのようなものだったのか。

 

後藤: 晴れやかな気分でしたね。なんというか、川を渡っちゃった感じ。組織再構築に向けて作成した4象限によって、チーム内の役割分担が明確になり、事業推進チーム、戦略経営チーム、組織管理チームと、お互いが何をやっているのかを前よりも理解するようになりました。営業に行く入口設計や企画の段階で、後藤の単独行動がほぼなくなり、必ずペアで動くようになった具体的行動の変化もありました。

後藤太一
リージョンワークス合同会社創業者、代表社員。米国認定都市計画士(AICP)、一級建築士。1992年鹿島建設に入社、1997年米国ポートランド都市圏自治体「メトロ」に出向等、国内外の数々の都市計画・まちづくりに関わり、2003年に東京から福岡へと拠点を移す。2014年合同会社リージョンワークス創業。2015年「福岡天神におけるまちづくりガイドラインに基づくエリアマネジメント」において日本都市計画学会賞石川賞を受賞

 

飯石: それまでは誰の担当なのかよくわからず、チームメンバーがボールを見合って落とすことがよくありました。仕事をあまり増やしたくない、という想いがが無意識に働いていたのかもしれません。今は、なんでも後藤さんに相談する感じではなくなりました。案件によって「これは営業的な動き」「こちらは組織のケア」という象限が定義され、チームという塊に相談がいくという形になりました。

飯石藍
合同会社リージョンワークスディレクター、公共R不動産コーディネーター、株式会社nest取締役。コンサルティング会社で自治体向けの業務改善支援業務に従事。企業のCSR支援、全国のNPOの経営支援等を手がけ、2013年に独立。2014年より公共施設・公共空間をもっと面白くする「公共R不動産」の立ち上げに関わり、その後、全国各地で公民連携・リノベーションまちづくりに携わる

 

 

後藤: リージョンワークスはプロジェクトベースでパートナーの出入りが多い会社です。それが散発的ではなく、4象限の下敷きにそった形で個々のエキスパートが生きる形をつくることができるようになりました。
私自身も晴れやかな気持ちで、迷わず進むしかない、と切り替わりました。全ての課題が解決できたわけではないですが、明確に整理できたので、向こう半年でなんとか解いていく目処も立ってきました。
「脱後藤・脱個人」が私にとってはすごく効いていて、肩の荷が軽くなり、自分自身が整理されてきています。これまでの私の課題は、心身の健康でした。がんばりすぎてはいけないから、より仕事を減らして、徹底的に効率と質を高めてほかを維持することで、乗りかかった船を難破させずに長きにわたって航海させることができる自信がつきました。

 

── この半年間のプロセスは、後藤さんの「個」が回復された時間でもあった。脱個人を果たしたことで、後藤さん自身が自分を取り戻しているのが言葉の端端から感じられる。

 

安心して次の航海に向かうことができる状態

──「脱後藤・脱個人」を果たした今、後藤さんはどこにいきたい?

 

後藤: リージョンワークスで取り組む仕事が峻別され始めています。「売り上げを立てるため」から、「これ、やらないでいい」という判断がチームでできるようになったのが大きいです。結果的に、「自分たちにとって、社会に貢献できると思える仕事に取り組む」というように、仕事の内容が純化していく期待感があります。ざっくりいうと「競合がいない世界」に向かっている感覚です。これまでは、「そんな(理想を追い求めては)仕事にならない」「売り上げのためにはやらなければ」という意識で仕事を拾わざるを得ない状況がありましたが、今では「自分たちと社会のために」に特化した仕事をやることに迷いなく、背中を押されている感じがあります。
ここからは、後藤個人として話をします。僕はいずれ世界で仕事をやりたい。コロナ時代は結果的に内部に集中した23年を過ごしてきました。しかし、私の中にはあらためて「海外で仕事したい」という思いが再燃していることがわかりました。世界には素晴らしい場所、素晴らしい人がたくさんいます。そういう方々と出会いながら、世界を舞台に仕事をしていきたい。具体的にはロシアや中国の周りの国に対して、これまでの仕事で培ってきた価値の提供をしたい、と考えています。

 

 

 

── 今回後藤さんがたどった組織改革のプロセスと経営者の苦悩は、リージョンワークスに限った話ではなく、今、同じように迷い、葛藤している組織にとっての普遍的な課題でもある。

 

田中: その通りだと思います。私たちplan-Aの強みは、チームのメンバーがそれぞれ大企業を経験して、いろんな紆余曲折を経て一般社会を知っていること。そのうえで、plan-Aという個々の才能を発揮しあえるチームに集い、個々の力を集結して、大企業とは違った形であらゆることを実現していくのを体験しました。個々の力を出し合うには、個人が自分の強みを発揮すること、苦手なものは苦手、と言えるチーム内の空気が生まれていくことが大切です。今多方面で使われる「心理的安全性」という言葉は、plan-Aでまさに体現されているのかな、と。個人が自立しながら、柔軟に組織に関わっていくあり方が、今の時代に必要なことではないかと思います。
今回のリージョンワークスへの伴走は、まさに「組織」と「個人」の間でいずれ必ず発生する課題と言えるものでした。個々の才能を発揮することが求められる環境にあるならなおさらです。せっかく集った人たちが、その課題につまずいて止まっていたら、社会全体の損失になってしまう。だから、私たちは相澤さんが最初にSlackに発した一言を拾い、この件に関わっていったのだと思います。

田中優子:
plan-Aメンバー。デベロッパーで分譲マンションの販売、法人営業、マーケティングやリブランディングなど幅広い業務を経験。2007年よりコーチングやカウンセリングのスキルを習得し実践を元に事業支援に活用。「前向きな変化を支援する」というビジョンのもと、ビジネスパーソン向け実践型コンテンツ制作、講座・ワークショップ設計、チームビルディング支援、新規事業支援などを実践。複数のプロジェクトマネジメントにも携わる

 

 

酒匂: 「組織」と「個人」の間に生じる課題は、今回のリージョンワークスのような多様な才能が集まった自由度の高い会社特有のものではなく、大企業も含めて似たような課題を抱えていると思います。大企業の場合は組織の合理化やシステム化を進めてきた結果、個をどう生かすかということについて、判断を捨てている実態があります。ところが、個人が起点となって動かしている会社は、個が近いぶんだけ、そうはいかず、「個人」と「組織」に生じる葛藤に真正面から向き合うことになります。そこから逃げずに率先して新たな働き方を切り開くことで、これからの「仕事とは何か」という可能性を広げてくれるのではないかと感じています。
私は現在、パラレルワークでplan-Aに関わっていますが、私自身もいずれ会社を持つ可能性があるなかで、今回のリージョンワークスの組織改革を客観性を持って見ていますし、いつか自分も辿る道なのかもしれない、と感じています。就職氷河期世代を経験した身として大企業的な組織風土に対して反骨精神もあるし、これから就職していこうとする後輩に対して新しい働き方に一緒に向かっていきたいとも思っています。
そんな私自身と混ざり合いながら、リージョンワークスの仕事に仮説をもって取り組んでいました。今回はいったん「雇用」と「業務委託」を切り分けた組織の4象限という形でリスタートを切りましたが、この道に終着点はなく、課題は折々に変わって続いていく。課題は常に「その時」にあります。その時に、個は自分に素直になっていい。そうでなければ、すべてが進まないんだな、ということがわかりました。

酒匂純:
plan-Aメンバー。マーケティング・ストラテジックプランナーとして、不動産業界を中心に幅広い事業に対して、経営や事業戦略立案、商品企画、ターゲット設定のマーケティング提案から、広告戦略立案や各種プロモーション戦術の立案等を含めたプランニングを手掛ける。自身の転職経験から、就活生や転職者の履歴書作成・面接対策などの支援も行っている

 

徹底的に「個」にフォーカスし、寄り添うなかで見えた「鏡」

── リージョンワークスの組織改革プロジェクトの根底には、青臭い言葉でいえば、「個」への「愛」が貫かれているように感じる。plan-Aのメンバーが、相澤の抱えたプロジェクトの課題を拾うということは、そこに「相澤さんを助けたい=そのパートナーを助けることで、社会全体がよくなる」という連動性を直感的に受け取っているのがわかる。

 

田中: 今回のリージョンワークスの組織改革を「組織」「社会」の課題としてとらえるというよりも、常に今目の前にいる相澤さん、後藤さんという「個」にフォーカスしています。そして、その「個」の前にいろんなハードルがあるのは当然です。それをどうにか前に進めていくために、私たちはいかに寄り添って一緒に「その時の答え」を導き出していくのか、という思いで進んできました。そして、リージョンワークスが自ら選んだ解は、結果的にいろんな組織に共通するものになりました。
これが「経営課題を解決するための相談」だったら、きっと私にはやらなかったと思います。結果論としてそこまで波及するものにはなりましたが、この取り組みの起点としては、後藤さん個人が徹底的に課題に向き合ってくださったからこそなし得たことだと思います。

 

飯石: plan-Aは、フリーランスのプロ集団でありながら、すごく心理的安全性が高く、言われなくてもサポートしあえる環境が整っていて、それぞれの個々がどんな精神状況なんだろうというのを、興味を持って見ていました。社員以上に愛情を傾けて向き合ってくれたな、というのが大きな感想です。熱はあるけれど、めちゃめちゃクールに追い詰めるところは追い詰めていく。でもそれって、本当に根っこに愛情がないとできないことで、冷静と情熱を併せ持って向き合ってくれました。相澤さん、田中さん、酒匂さん御三方のプロフェッショナルが絶妙なバランス感をもって爆発した時間でもありました。相澤さんが後ろで手綱を引き、前で田中さんがやさしく後藤さんを諭す、そしてまた後ろで酒匂さんがまとめる、というように、得意なところで、バトンを渡しあえる。そんなチームがリージョンワークスの「鏡」のような存在でもあると感じ、良い影響を受けました。私個人としても、リージョンワークスとしても、変化の過渡期にあるので、この関係性が今後さらにそれぞれの組織や個にとって、よくなっていくものにつながると思います。
相澤さんというキャラクターだけ見ていると、剛腕でどんな逆境にも諦めないゴリゴリの人のようでいて、個の中に硬軟併せ持った存在でもある。それが、plan-Aがチームになったことで、さまざまな個性と才能が混じり合って、さらに安心感をもってさまざまな課題を預けられる、そんな絶対的な信頼があります。

 

 

酒匂: よくplan-Aのメンバーと話しているんですが、plan-Aは心理的安全性の高い「ピラニア集団」である、と(笑)。みんなとにかく仕事が大好きで、仕事を拾いにいって、かつ仕事に取り組むお互いを肯定し合っている(笑)。

 

後藤: この半年、いろんなことを学んだな、と思っています。すでに、会社の今後をどうしていこうかというフェーズから、地球上に生を受けた80億というチームの一人として、これから自分は何をやっていこうか、空から自分を見ているような感覚にあります。チームとは、コミュニティとは、プラットフォームとは、ファミリーとは、なんだろう。今私は、そんなことを考えています。
私は、仕事は人生の一部だと思っていて、個々の仕事以外の部分にも動的な変化をもたらす人と人とのつながり方がどうあればいいのか、思索の旅の途中にあります。チームも動的に入れ替わっていき、現状に安住せずに変化し続けることによって、私に関わる仲間や人間関係が安全であるにはどうしたらいいのか、今回学んだことから得られた羅針盤があれば、きっとどんな荒波にも向かっていけるのだろうな、と思います。

 

 

── 後藤さんが徹底的に「個」に向き合い、組織を変える決断をしていったからこそ、チームの個々が自立的に動き出すようになった。後藤さんが苦悩から解放され、後藤さん本来がもつ才能が再び自由に動き出しているように思える。

 

 

 

相澤: これまで「あの人から見たplan-A」のインタビューを重ねていくなかで、毎回、自分のことを、誰かに語っていただくのは、ありがたい時間でした。今日は、plan-Aがチームとしてインタビューを受けた初めての回で、これまでとは異なる視点で、親心とは違うが、すごく微笑ましく、ほくほくしている感じでインタビューを見ていました。
さっき飯石さんも言っていましたが、私たちのチームはみんなそれぞれお互いのことを信頼していて、みんなのやっていることそのものを疑わない、任せて大丈夫、という揺るがないものがあります。今回のリージョンワークスの組織改革も、田中さんという最前線がいて、そこの後ろに酒匂さんが控えているという強烈な布陣で望み、それぞれが困惑する瞬間もあって、それも全部ひっくるめて、我らにとって大いなる経験値になりました。月に一度の後藤さんとのミーティングの度に我らも同じように悩みました。反面教師とはちがう、まるで「鏡」を見ているかのような時間でした。
今日のインタビューでいみじくも話題に出ていたのが、結局plan-Aって、どのプロジェクトにおいても「個人」にフォーカスするチームであるということ。そして、プロジェクトの成否は、企業であっても担当の「個」によるもので、「組織」が出てくるのは結構後であることが多いです。まずは「個」がどう思って、その「個」をどう包み込むのか、寄り添うのか、突き放すのか、是々非々のバランスで毎度毎度やっているのかな、と思います。厳しい局面はめっちゃあるんですが、根底に流れる「愛」のような絶対的な安心感が存在している。それがplan-Aというチームを象徴しているように思えます。
そしてそれは、どの組織においても、個々が持っている「パブリックマインド」と「使命感」が最大限に発揮される環境を整えることで、組織自体が拡張性をもちつつ、個々が楽しみながら仕事を進めていくことができるようになる。チーム自体も分野横断していき、新たな時代をつくる「働き方」が生まれていく。リージョンワークスとplan-Aの二つの組織を行き来しながら感じていたことです。

 

(構成・文=北原まどか 写真=サンキャク)
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