リストグループの数年後を見据える慧眼

鈴木篤さん(リストプロパティーズ株式会社 主任)
櫻井怜歩さん(リストプロパティーズ株式会社)

「篤(あつし)」と言えば、リストグループ時代には相澤毅の一歩後ろで、メモを取り、算盤を弾き、情報をパソコンに打ち込む、陰に日向に寄り添い実務を着実にこなしていく……そんな「相棒」の姿を思い浮かべる人も多いだろう。そして「櫻井」は、「次代の相澤」。若いながらも堂々としたプレゼンテーションを披露し、抜群の度胸と愛嬌で、大きな仕事をモノにしてきた強運と実力の持ち主。相澤の「愛弟子」たちは、「師匠」のことをどう見ているのかーー。リストプロパティーズ株式会社を引っ張る二人の若手社員に、話を聞いた。

#When?/Where?

特色のある新規プロジェクトをともに手掛けてきた。

櫻井怜歩さん(以下、敬省略): 相澤さんとは、G Innovation Hub Yokohama(以下「G」)のプロジェクトで初めてご一緒しました。私の立場は、相澤さんの「後任」という形です。
G は、リストプロパティーズが保有している第一有楽ビルの空きテナント活用プロジェクトとしてスタートしました。関内駅直結の歴史あるビルディングの2 階の一部と3 階全フロアを、シェアオフィス・コワーキングスペースとして生まれ変わらせる。リノベーションに関わったのは、関内エリアですでに活躍している建築・設計事務所や施工会社、シェアオフィス運営事業者、デザイン会社、クリエイティブユニットなどです。リストグループにとっての事業性や収益性を確保して運営の中心に据えながらも、コンセプトと物語をつくり上げていくのは外部の人たちという、たいへん面白いプロジェクトになりました。
相澤さんと一緒に仕事をしてきたのは、この5 月(2019 年)で1 年とちょっと、という短い期間です。しかし、振り返れば、出会いは私が内定者としてリストグループの懇親会に参加する時に、「西上(櫻井の旧姓)って人に会いたい」と、List Link Lounge(リストリンクラウンジ:相澤がプロデュースしたリスト本社ビル1 階のコミュニティスペース)に相澤さんが私に会いに来てくださったのが最初です。

 

鈴木篤さん(以下、敬称略): 相澤さんと私の関係は、上司と部下で、ずいぶん長いこと一緒にいるような気がしますが、実際に仕事をしていたのはのべ4 年間くらいです。大きな仕事としては、横浜市戸塚区での新築戸建て住宅の大規模開発プロジェクト「nococo town(ノココタウン)」や、リスト本社ビル1 階の改修プロジェクト「List Link Lounge」、そして今回の「G」と、グループ内でも特色のある新規プロジェクトを手がけてきました。

リストグループの裏方として数々のプロジェクトを形にしてきた鈴木篤と、若手のエース・櫻井怜歩。竣工したばかりのG Innovation Hub Yokohama にて。

「境界線を越えていける存在がリストグループに確実に必要で、それができるのは櫻井だと思っていました。G の主幹をやるという仕事は、本人にしてはすごく大変なことだったと思いますが、何度でも失敗しリカバリしていける生命力があるので、彼女をアサインできたのは超ラッキーでした」(相澤)

#What?

nococo とLLL の成果、G

鈴木: 相澤さんが手がける事業は、リストグループの中でも特別に新しい、「目玉」になることが多かったです。新築戸建て住宅の大規模開発で、160 戸の全棟に次世代省エネルギー指標でもあるBELS の五つ星を取得したLIST GARDEN nococo-town や、本社ビルの1 階をラウンジにして地域住民等に開放するコミュニティ機能を有したList Link Louge、それからリスト所有の関内駅直結シェアオフィス&コワーキングスペースのG Innovation Hub Yokohama で関内エリアの活性化を仕掛けるなど、相澤さんは社内で常にイノベーションを生み出す人でした。社内的にはもちろん利益をあげることが前提条件ですが、利益以上に会社の価値のようなものを生み出すうえで莫大な貢献をしてきたのが相澤さんです。相澤さんが独立した今、リストグループとしての業務は滞ることなく回っているけれども、会社としては「飛び道具」がなくなった、という感じかもしれません。
相澤さんは常に動き回って、とにかくいろんな人に会って、そして彼の人脈をコンテンツに注ぎこんできて。多種多様な人々の経験や知見を一つのストーリーにまとめ上げる技量が本当にすごいな、と感じています。彼の仕事に対する一般的な社内評価は難しく、意見が割れるところもあるのですが、地域や社会からの評価は非常に高いのが特徴と思います。リストグループが、数年後に社会からどのように見られているのかまでを見越して、社内的な理解を得られないなかで壁を突破していくとでも言いますか。

 

櫻井: G のプロジェクトで、相澤さん、篤さんに私が合流しました。社内的には私が中心になってプロジェクトマネジメントをしていく立場でしたが、コンセプトやストーリーはすでに相澤さんが立ち上げており、篤さんが監督をしながら私が動く、という形でした。
入社して数年の若手社員がこのような立場で仕事を任せられるという重責もありましたが、今のリストプロパティーズは、個人に仕事がついてくる、という、ある意味独立的な社風があり、それがすごくいい形で作用したのかな、と思います。

 

#How?

誰と仕事をするのか? それが次の価値を生み出す。

櫻井: G の仕事について、詳しくはプロジェクトメンバーの対談を読んでいただければと思うのですが、「誰と仕事をするのか」というのがすでに決まっていて、そこから「何をするのか」が形になっていく、状態で動いていました。設計・建築は、関内に拠点を置き、数々の建築デザインを生み出してきた西田司(株式会社オンデザインパートナーズ)、原﨑寛明さん(Hiarchitecture)。施工は株式会社ルーヴィスの福井信行さん。シェアオフィスの構築支援は関内イノベーションイニシアティブ株式会社の治田友香さん、森川正信さん。株式会セルディビジョンの辻浩史さんがロゴデザインを手がけ、オトノマ株式会社の刈込隆二さんがコーヒーカルチャーのプロデュースをする、という、いずれも関内で名が知れた方々が一堂に介して仕事をしていく、とても贅沢なものでした。相澤さんだからこそできる仕事の進め方ではないかと思います。

 

鈴木: 相澤さんほどの経験値があれば、人に会わずとも自分で仕事を構築することもできるはずなんですが、常に新しい刺激や学びを求めて、必ずその道のスペシャリストに会って話を聞いて、自分のなかで咀嚼して、飲み込んで、そしてその人たちを巻き込みながら一緒に仕事をしていくんです。話を聞いて終わりではない、相手からひたすら学ぶ、引き出していく力が、本当にめちゃくちゃすごいんです。

 

櫻井: G では、個性の強い、それぞれバラバラに仕事をしてきたプロフェッショナルたちが、みんな同じビジョン、目標、目的をもって動いているということを感じながら仕事をしていました。G が竣工して、入居者さんが入って、結果はこれから出てくると思うんですが、最初の段階で「G が目指すべきもの」がしっかりと共有できていたことが、自信につながっています。このプロジェクトメンバーが関わってくれているからこそ、きっと、そのつながりで、いろんな人が集まり、関内が変わってくるんじゃないかなという期待値がすごく高いです。

 

鈴木: G に集う人たちと、関内のまちとの接点を当社が設けることができるんじゃないかと思っています。これまでは不動産・デベロッパーという業態だったのが、シェアオフィスという新しい事業に参入することで、これまでにない新しいことにチャレンジしやすくなるのではないかと思います。

 

 

#Why?

純粋な漆黒。全てを飲み込み、咀嚼し、そして新しい星を生み出す力。

櫻井: 相澤さんを一言でいうならば、銀河系……(笑)。言葉では表現しづらい、感覚的なものなんですが、ギラギラしたものがわ~っと集まってきて、星のようなものが何百何千といろんな光り方をしていて、何色にも輝きそうで、点在しているのか集合しているのかすら言い表せないという……。

 

鈴木: 「漆黒」ですかね。漆って、塗り重ねるからこそ、黒が際立ってくるじゃないですか。ブラックの部分が光り輝いていて、すごくピュアな黒なんですよね。

 

櫻井: 私をG のプロジェクトマネージャーに抜擢してくださった相澤さんには、心から感謝しています。私の人生、キャリアを大きく変える出来事でした。私の人生においても、この仕事はやりたくて、やるべきことで、だからこそどんなに辛くても耐えられるし、やりたいことだと思っています。

きっと、数年後とかに、ああ、こういうことをやったんだな、という関係からの学びを現在進行形でやっているのかな、と思います。

私自身、父親が建設会社を、母親が不動産業を経営しているので、「まちづくり」は私の原点にあったように思います。物心ついた時からスマートフォンが身近にあって、インターネットでグローバルにつながることのできる世界にいました。いつか国境を超えた国際的な不動産業や、観光業へつなげるようなキャリアを築いていきたい、と考えています。

 

鈴木: 今、相澤さんは独立して、リストグループ内での上司と部下という関係ではなくなりました。最近、笑い話のネタになるのですが、私は誰からも怒られなくなってしまったんです。それは私が成長したからではなくて(笑)。相澤さんは常に私に対して、「お前は将来的にどうなりたいのか? 誰のための仕事なのか?」というのを問い詰めて、それがゆえによく私のことを怒ってくれました。怒られた当時は非常につらかったんですが、それだけ真剣に私のこと、そして仕事に関わる人たちのことを考えてくれる人って、なかなかいないのではないかと思います。
どんなに相澤さんに怒鳴られても耐えられる理油は、相澤さんが本気で自分や社会のことを考えたうえで言ってくれている、ということがわかるからです。社内で相澤さんの元で働けるというポジションは、相当恵まれていると言えます。
相澤さんはゼロからイチを生み出す「ゼロイチ」の人。地域や社会や業界にある課題を見つけ出して、先行してそれに対して動きをつくっていきます。一方私は、ゼロイチではなく、イチをニにしたりジュウにするのが得意です。誰かがやりたいと言ったものを、スピードを加速して成り立たせることができるのが強みだと思っていますし、それを極めていきたいです。

 

「篤はナンバーツータイプで、時間が経つなかで着実に信頼できる存在に成長してきています。私が独立してからも、彼は本当に頼りになる存在であり続けてくれることは、喜ばしいです」(相澤)