【前編】組織の解体と再構築。痛みを乗り越えたリージョンワークスの組織改革とは。

後藤太一さん(リージョンワークス合同会社 代表社員)
飯石藍さん(リージョンワークス合同会社 ディレクター)

リージョンワークス合同会社の後藤太一さんといえば、都市再生、地域経済開発のコンサルタントとして、まちづくり業界で鋭い光を放つ存在だ。米国認定都市計画士としてグローバルに世界を見つめ、数々のエリアマネジメントで輝かしい実績を積み重ねてきた後藤さんは、リージョンワークスがチームとしてより高いパフォーマンスを発揮し、大都市から小さな町まで、持続可能性に満ちた手応えのある未来をつくるために、組織改革に取り組むことを決断した。
しかし、一言で組織改革といっても、一朝一夕で実現できるものではない。代表個人の人生を掘り下げ、これまで培ってきた経験や知見、そして組織やチームメンバーへの期待値を正直にふりかえり、目指す未来を描いていく。「課題の解きほぐし」から「組織の持つ本質的価値の抽出」、そして「個々の才能が最大化する業務形態」を後藤さんが導き出すプロセスに寄り添ったのがplan-Aだ。
折しも、plan-A=相澤毅からチームとして動き出した2021年は、plan-Aにとっても業務領域が不動産や都市開発のコンサルティングから、組織改革や経営支援といった分野横断的な領域に拡張を遂げつつある時期。お互いを「鏡のような存在」と認識し合うリージョンワークスとともに、約半年にわたる組織改革のプロセスを、リージョンワークス代表の後藤さん、リージョンワークスのディレクターとして寄り添い続けた飯石藍さん(公共R不動産コーディネーター)と、plan-Aの田中優子、酒匂純が振り返る。

リブランディングから組織改革へ

── plan-Aの相澤は独立前、リストグループの社長室で日本最大級のエコタウン開発やゼロエネルギー住宅企画、広報戦略や産学連携など多様な分野の仕事に取り組んできた。会社や不動産という枠組みを超えて、分野横断的にさまざまな組織と主に「まちづくり」の文脈で協働や共創を手がけている。2018年にplan-Aとして独立以降、電鉄会社や家電メーカー、NPOなど、さらに多様な主体との協業により、活動フィールドが劇的に拡大する。コンサルやプロジェクトマネジメントといった言葉ではくくれない事業領域へと踏み出した2021年、plan-Aには新しいメンバーが加わり、チームとして動いていくようになる。

 

相澤:  2021年ごろからplan-Aがチームとして動き出す土台ができ始めていました。現在、チームメンバーは5人いて、それぞれがフリーランス、またはパラレルワークとして、雇用ではない形でplan-Aに関わっています。今回のリージョンワークスの組織改革に関わった田中さんは、大手ディベロッパーでの分譲マンションの販売や新規事業の開発を経て、個人としてはコーチングやカウンセリングなどのスキルを習得して事業支援に活用している実績があります。酒匂さんは広告代理店で不動産業界を中心とした幅広い事業に対して、事業戦略や広告戦略を立案し、plan-Aにはパラレルワークで関わっています。
チームメンバーに共通しているのは「子ども世代に対して、我々は何を残せるのか」という「パブリックマインド」で、それは、使命感という言葉に言い換えることもできると思います。また、メンバーの共通性として、大企業での勤務や、大きなプロジェクトを動かしてきており、制約条件の多い中で時間をかけてそれなりの辛苦を乗り越えてきた経験を有していることがあります。
plan-Aが関わる組織やプロジェクトは大小様々ではありますが、一つひとつの抱える課題や価値を細分化していくと、最終的には組織に関わる人の「暮らし方」「働き方」が大きく変化している過渡期にあるなかで、まさに「多様化していく働き方を組織として許容していく」ことに向き合わざるをえないことがわかってきました。
今回、リージョンワークスの「組織改革」プロジェクトに関わることになったのも、時代の必然と言えるかもしれません。これまで数々の都市開発プロジェクトで華々しい実績を持つ、圧倒的な天才肌の後藤太一さんも、チームとしての「働き方」をどうあるべきかについて、悩んでいました。いよいよこの問題に向き合わざるを得ないことが明らかになった2021年夏、すでにリージョンワークスのディレクターという立場で「半分内部」にいた私・相澤ではなく、チーム・plan-Aとして取り組んでいくべきだと考えました。
リージョンワークスの組織改革は、結果的に「雇用」という働き方の継続か、個々の才能を集結しながらプロジェクトを動かしていく「業務委託」という働き方にするかという選択に集約していくのですが、このプロセスにおいて、私たちは常に、plan-Aという組織のあり方に置き換えながらすべての根元にあるものをさぐっていきました。
ここからは、リージョンワークスの組織改革に関わった田中さんと酒匂さんをメインに、後藤さん、飯石さんに語ってもらうことにします。

 

後藤太一(写真左)
リージョンワークス合同会社創業者、代表社員。米国認定都市計画士(AICP)、一級建築士。1992年鹿島建設に入社、1997年米国ポートランド都市圏自治体「メトロ」に出向等、国内外の数々の都市計画・まちづくりに関わり、2003年に東京から福岡へと拠点を移す。2014年合同会社リージョンワークス創業。2015年「福岡天神におけるまちづくりガイドラインに基づくエリアマネジメント」において日本都市計画学会賞石川賞を受賞
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飯石藍(写真右)
合同会社リージョンワークスディレクター、公共R不動産コーディネーター、株式会社nest取締役。コンサルティング会社で自治体向けの業務改善支援業務に従事。企業のCSR支援、全国のNPOの経営支援等を手がけ、2013年に独立。2014年より公共施設・公共空間をもっと面白くする「公共R不動産」の立ち上げに関わり、その後、全国各地で公民連携・リノベーションまちづくりに携わる

 

 

── 相澤と後藤さんとの出会いをつくったのは飯石さんだった。公共R不動産のコーディネーターでもある飯石さんが2017年、リージョンワークスに不動産に特化して動けるパートナーが必要だとして相澤を後藤さんに引き合わせた。リージョンワークスは大都市・東京渋谷の経済開発戦略や、地方創生のキラ星とも言える徳島県神山町の地方創生戦略のほか、大規模再開発や公民連携などさまざまなエリアマネジメントを成功に導いてきた。「リージョンワークスは究極の天才集団」というイメージで後藤さんと初対面を果たした相澤は、その組織をまとめる代表の苦悩を察知することになる。

 

後藤: 相澤さんと初めて食事に行ったその日に「後藤さんをなんとかしてあげないといけない気がする」と言われたんですよ。その言葉が印象に残っています。2018年に相澤さんが独立してplan-Aを立ち上げて間もなく、リージョンワークスのディレクターとして不動産事業に関わってもらうようになり、2020年には当社のリブランディングとしてMVVやロゴ、ウェブサイトのリニューアルをplan-Aのパートナーでもあるセルディビジョンに依頼しました。
この間、スタッフでリブランディングについて議論するプロセスのなかで、「組織のあり方を見直す必要性」を痛感する出来事がありました。リージョンワークスは自分たちで議論しながら物事を動かしていく力があるはずだったのに、実は後藤が一人で全てを抱えていたように見えることが浮き彫りになった時に、相澤さんが火中の栗を拾いにきたんです。

 

相澤: リージョンワークスのリブランディングは2020年から2021年春にかけて行っていて、会社案内を刷新しようとした時に、社員の中から「結局その会社案内を使うのは後藤さんだから」という言葉が出てきたんです。あ、これはマズいなと。組織として考えていくべきはずのことが、リージョンワークス=後藤太一になっていることが浮き彫りになり、もっと「チーム戦でいくべき」、それを後藤さん自身も望んでいるけれどもどうしようもできない状況にあることがわかりました。
私はすでにリージョンワークスのディレクターとして半分内部の人間であり、飯石さんと同じ立場でした。そういう自分がゴリゴリ組織変革をやろうとすると、すごく難しくなる。そんな状態で、plan-ASlackでぽろっと「リージョンワークスのリブランディングをやっているんだけど、それとは異なる組織内部の課題が見えてきて、サポートしたい」と投稿したんです。

── 2021年は、plan-Aが相澤個人から「チーム」としてメンバーが加わった時期に重なる。田中が4月、酒匂が6月にplan-Aにジョインし、日常的な仕事のやりとりは常にSlackで行っていた。

 

田中: 私たちがplan-Aにジョインしたのは2021年の春ごろです。plan-Aは本当に多種多様の仕事をやっているなかで、相澤さんが抱えている悩みをどうやったら私たちがサポートできるかな、と常に自主的に考えており、私たちがSlackでの相澤さんの投稿をみて、自ら課題を拾いにいく文化が、すでにその時にはチーム内にできあがっていました。
リージョンワークスについて相澤さんに詳しく聞き込むうちに、今回のケースは組織課題が明確に見えていないなかでの組織改革で、そんなに簡単にいくものではないと感じました。心理的なハードルが高い分、半分内部の相澤さんが直接的に手を動かさない方がいい。正解がなくて決めることが難しい分野だからこそ、リージョンワークスを直接知らない私たちがドライにやる方がいいと思い、前面に出てサポートすることを提案しました。
最初は、リージョンワークスのことを何も知らない私たちが相澤さんと後藤さんの打ち合わせに入って方向整理することに対して、何度も確認して合意を得て、後藤さんとオンラインでの面談が始まりました。リージョンワークスの状況把握のために、徹底したヒアリングを実施し、その後は質問表への回答依頼などの「宿題」を用意して、後藤さんの想いを引き出していくのが私の担当。例えば、リブランディングはうまくいっているように見えるが、それでも残る違和感が何なのか、悩みとして表層化していること以外に、課題の本質には何があるのかを見つけていく感じです。そこで語られた、ふわっとしたアイデアを資料にまとめ企画書にするのは、酒匂さんが担当しました。

 

田中優子(写真左)
plan-Aメンバー。デベロッパーで分譲マンションの販売、法人営業、マーケティングやリブランディングなど幅広い業務を経験。2007年よりコーチングやカウンセリングのスキルを習得し実践を元に事業支援に活用。「前向きな変化を支援する」というビジョンのもと、ビジネスパーソン向け実践型コンテンツ制作、講座・ワークショップ設計、チームビルディング支援、新規事業支援などを実践。複数のプロジェクトマネジメントにも携わる

 

後藤: 今回、plan-Aと一緒にやったことが「リブランディング」といったら不適切で、その言葉は2021年春ごろまでにやったホームページリニューアルなどのお化粧部分のことを指していました。2021年秋以降にplan-Aと取り組んだことは、組織改革でした。リージョンワークスで働く「個」の問題がクローズアップされた時に、人間の再配置の鉈を振るうことになるわけですが、私としては働く一人ひとりを尊重し、大事にしているつもりだったので、その人にとっての「いい形の働き方」をその人自身が納得して選んでいくためにどうしたらいいのか、まずは私自身の「個」を掘り下げることに取り組みました。
私一人だと解けない課題であることはわかっていたので、それを田中さんが、「どうしたらいいか、わかっていますか?わかっていませんか?」と、淡々と質問していく。膨大な質問と宿題に答えていくなかで、こんなふうに聞くといいんだ、こういう整理の仕方をするといいんだな、と感じながら話をしていました。

田中: 毎回、後藤さんにすごい量の宿題を出していましたね。組織内部の各個人の役割をエクセルにしていただいたり、考えていることを図表にしていただくなどのプロセスを経て、見えてきた課題を具体化するのが、私の仕事でした。
例えば後藤さんのおっしゃることは全て正しいんですが、メンバーにとっては「その通りだけど、できない!」と感じるであろうことも多々あり、円滑に進んでいかない状況が伺えたりもしたので、その場面を想定し、またさらに課題と実践案を具体化していく。私の質問は割としつこかったと思うんですが、結果的にチームとしてリージョンワークスを維持するためには、社員として個々とどのような形態で関わるかも重要だというところに至りました。それは今回の場合、「雇用」し続けることではなく、いろんな働き方の人がいてそれぞれの自主性を生かして頼る、つまり「業務委託」という関係性に変化していく必要があるということも見えてきて、そういう一足飛びでは難しいようなことを、一つひとつ解像度をあげ向き合うステップを踏んでいきました。

酒匂: 2021年秋頃からの約半年間、plan-Aでは主に田中さんと私がリージョンワークスの組織改革の担当として、後藤さんへのヒアリングを行っていました。そのときに私が感じていたのは、「リージョンワークスとplan-Aの対だ」ということです。
相澤さんもplan-Aのリーダーであり、経営者として、後藤さんの抱える悩みが理解できるし、雇用やチームビルディングの違いに対する自負もある。一方で、半分はリージョンワークスのディレクターとしての面も持ち合わせていて、まるでplan-Aの鏡のように後藤さんと、リージョンワークスを見ていたんじゃないかと思うんです。我々がplan-Aに戻って作戦会議をする時にも、自らをリージョンワークスに投影するシーンが多々ありました。僕はパラレルワークでplan-Aに業務委託で関わっていて、本業では経営者ではなく従業員。経営者の悩みを目の当たりにするなかで、今は「働き方」の転換期にある時代なんだな、と強く感じていました。これからの経営のあり方、従業員との関わりの持ち方、仕事の発注の仕方などが、大きく変わりつつある時代の一端を見ているんだな、という気持ちでした。

 

酒匂純
plan-Aメンバー。マーケティング・ストラテジックプランナーとして、不動産業界を中心に幅広い事業に対して、経営や事業戦略立案、商品企画、ターゲット設定のマーケティング提案から、広告戦略立案や各種プロモーション戦術の立案等を含めたプランニングを手掛ける。自身の転職経験から、就活生や転職者の履歴書作成・面接対策などの支援も行っている

 

 

チームが納得するプロセスにかけた時間

── これまでのトップダウン型経営の行き詰まりが見られるようになり、フラット型やTeal組織など、さまざまな組織のあり方が論じられるようになっている。世の中の組織は変化を求めているが、それは決して簡単なことではない。リージョンワークスもまさにその渦中にあり、最終的に後藤さんは大きな決断をすることになるが、当初から解をもっていたのだろうか。

 

後藤: 解というか、いくつかのイメージがあったが、自分では決められなくて黙っていようと思っていました。チームの自主性を重んじていたので、あえてバイアスをかけないようにしたつもりでした。雇用を継続する、あるいは全員解雇して業務委託にする。どちらの道に行くにも、関所がいっぱいありそうで、それを乗り越えられるだろうか、と考えていました。組織のあり方を変えなければいけないけれど、極論すれば、ワンマン社長の部下で居続けるパターンか、完全プロ集団として部下ゼロの選択を迫る、みたいな話です。リージョンワークスではそのどちらを軸にするかという、人事そのものの話に取り組みました。
結果的には後者で、ほとんどのメンバーはプロ集団として業務委託契約に変え、一人だけは雇用を継続しました。適材適所の形に落ち着いて、全員がストンと腹落ちする形で、前に進めるようになりました。

 

 

 

 

── その結論を導き出すまで、華々しい成功の裏で後藤さんが抱えていたもどかしさ、それを相澤が察知してplan-Aが伴走していくなかで、組織の中のさまざまな糸がからみあって、混沌としていたものを、田中の絶妙なヒアリングによって解きほぐしていくプロセスが始まった。

 

田中: リージョンワークスの課題は要素が複雑にからみあっているので、私たちが、「ここに因果があった」と断言するのは難しいです。大前提として、後藤さんはメンバーやクライアントに対する思いや責任感、熱量が強くありました。それがゆえに、こっちを立てればあっちが立たないことに苦悩していた様子が、ヒアリングや宿題を拝見するなかで見えてきて、最後には後藤さん一人ではなく、リージョンワークスの全員で「働き方」の課題に向き合う必要があることがわかってきました。
そこで2022215日、リージョンワークスの組織改革の一つの集大成として、ここ(G Innovation Hub Yokohamaの会議室)で社員全員のワークショップを行いました。社員の気持ちがきちんと納得する形を作ること。この準備として、後藤さん自身の気持ちを前に進めていくためにほぐしていくことにも注力しました。

 

 

 

酒匂: リージョンワークスのチーム全員が参加するワークショップを設計し、そこで意思統一をはかっていくことが、半年間後藤さんに寄り添ってきた私たちのいったんのゴールでした。その前に、組織をどうしたいのかを後藤さん自身が決める。そのために田中さんが半年におよぶ時間をかけて後藤さん自身の解きほぐしを行っていた、という流れです。

飯石: 私自身は、リージョンワークスの組織改革においては、半分リージョンワークスの一員として、plan-Aとの「間にいる」というポジションでした。組織改革の仮説を揉んでいる時に、客観的な立場として私の見えていることをお伝えし、一緒に考えていきました。1年前は、組織としていい状態には至っていないという危機感があり、外から見て認知度も高いけれど、実際に中の人がいい状態で働けるチームである、そんな高みを目指していきたいと思っていました。
月に1回のミーティングを45回重ねて、その先に社員全体でのワークショップを実施して、社員の気持ちを1段階上げていきたい。そこから先に、次のステップに進めると思ったんです。

田中: 大きな改革を経営者の意思でやるのは、不安でもあるし、でもそれをやらなければならない場面は確実にあります。半年に及ぶ後藤さんの「解きほぐし」といった抽象的なプロセスを重ねるなかで、「じゃあ、どうしたらいいんだよ?」という決断のタイミングが来たのが2021年末のことです。後藤さんが組織改革の決断をして、それを社員に発表する。そのことに対してメンバーが受け止め、納得し、自律的に動けるようになれば、リージョンワークスが社会に及ぼす価値は永続的になっていくという確信がありました。そこに至るために、課題を細分化し、整理整頓して、最終的にはワークショップという形に設計し、メンバー全員に自分ごととして捉えていただく必要がある。このワークショップが、私にとっても、plan-Aにとっても、大きな山となりました。

後藤: 最後に、後藤の意思で「組織改革をやります」という宣言をする、ここまできたからには、もう逃げられません。plan-Aとの半年にわたるセッションのプロセスを通じて、自分がやるべきことをうまく吸収していき、覚悟が定まっていく感覚がありました。もちろん、自分が発する言葉や判断が正しいのか、常に悩みや迷いの中にありましたが、それを繰り返しながら、組織に起こる全てのことに納得し、総合的な着地に至った実感があります。

 

 

 

 

「チームで/個々で決める」ワークショップ

── 満を持して迎えた2022年2月15日のワークショップは、相澤がコロナに倒れて不在の中で行われた。どのように進んでいったのか。

 

田中: 後藤さんを含め、これまでオンラインでしか会ったことのなかった方々が、福岡から横浜まで来てくださり、初めてこのテーマについて議論をする。対面で会う機会があまりないメンバーも多かったため、そのシチュエーションにも副次的効果があったように思います。メンバーに理解してもらうために後藤さんが考え抜いて提案したリージョンワークスの再構築の方向性案や、組織と人の流動性に関する年表も秀逸でした。
ワークショップでは、リージョンワークスの事業や課題についてお題を用意し、その都度グループを変えてアイデアを出していく。壁に張り出されたふせんを整理してまとめていく。我々は、そのアウトプットのプロセスを丁寧に設計して、実行のファシリテーションを行ったという流れです。

 

 

 

後藤: 私の中では、リージョンワークスという組織を、雇用から業務委託に変えていく、という大きな意思を持ってワークショップに臨みました。それを決めるにあたって、「当社の再構築の方向性(案)」として、当社メンバーによる4つのコア業務(事業企画/事業推進/戦略経営/組織管理)を再定義し、外部パートナーのサポートを仕組み化してしていく4象限の図を作成できたことが大きいです。これをもって、チームによる継続的な事業を支える業務のみを雇用とし、それ以外を業務委託という形態を可視化して提案することにしました。
1年前のリブランディングでは、クリエイティブの変化はあったものの「お化粧」止まりで、事業構造の課題が解けていなかった、という話から始めました。顧客視点に立っておらず、財務の悪化や人材の流動化を止められず、課題の棚卸しで終わってしまった反省を、正直に伝えていきました。
ここで私がもっとも強調したかったのは、「脱個人・脱後藤」という話です。これまではリージョンワークス=後藤と見られていたかもしれない。だけど、社長と後藤個人は別の人格である、と宣言しました。自分自身では切り分けていたつもりでしたが、実態はそうなっていなかったから、今回の組織改革が必要だったわけです。リージョンワークス=後藤、ではなく、チームである、と。それがみんなに伝わった手応えがありました。

 

 

 

飯石: チームといっても、雇用されている方とそうでない方が同じ土俵で議論するには、とても気を遣うものです。このワークショップでは、私が予想していたよりもみんなからポジティブな意見が出てきました。雇用されている方も、自分なりの得意技、役割を改めて言語化して、全体と共有できました。外部パートナーからも、それぞれのリージョンワークスヘのコミットメントが聞かれました。
雇用スタッフも、業務委託のパートナーも、それぞれ得意スキルが違います。雇用メンバーはその人しか持っていないスキルを全うしているのに、表に出る花形のプロジェクトメンバーに負い目を感じがちです。この人がいなければ会社の腰骨が折れてしまうということを全力で伝え、その人を認める場にしていきたいと思っていました。
リージョンワークスは、チームメンバーにとって感情的なものを言える安全な場である。そういうチームでもあることを確認し合いました。それが私たちには一番必要だった。

後藤: 午後の31組でチームをシャッフルしながら全員が平等に話していくワークを経て、それぞれが自分とリージョンワークスの関わり方について納得感を得ていったのではないかと思います。あとは組織としての決定事項として、新年度からの働き方について契約案を提示するのが代表としての私の役目であると、plan-Aから愛をもってボールを渡されました。
昨年の秋ごろからplan-Aの伴走を受けて、徹底的に私自身も個の奥深くまで向き合い、2月の合宿を経て4月の新年度からの働き方を決めていった。この先は後藤がどうするか。リージョンワークスがどう動くか。ここまでが「仕込み」でした。
そして次の半年間をリージョンワークスのみんなでやっていく、本当の「組織改革」の始まりです。本当に変わっていくプロセスをもう半年やるから、その一員としてこの部分を担ってほしい、と伝えて、お互いに納得感をもって契約形態を変えていったのが、新年度の41日でした。

 

→後編につづく

 

 

(構成・文=北原まどか 写真=サンキャク)